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【文豪ストレイドッグス】愚劣なる恋愛詩

第19章 【R18】Me & the rhythm(中原中也)


「おい、深愛!」

 その声に振り向くと、彼は怒りをはらんだ目で私を見ていた。

 はて。

 なにかやらかしただろうか、と。

 日々の素晴らしい仕事の実績を思い返しながら思う。

「何でしょうか。」

「何でしょうかじゃねェ!テメェ、姐さんに俺の寝顔写真送りやがったな!?」

「…あぁ。」

 そういえば送った、と。

「おかげで姐さんの昔語りが始まったんだぞ!?部下にとんでもない黒歴史まで知られて最悪だっつーの!」

「だって中也さん、寝てると眉が下がって可愛いんです。写メりたくもなります。」

「なるな!」

 大声で叫んだ中也さんを笑いつつ、私は買ってきたフルーツの皮をむく。

 爽やかな香りが弾け、ゴクリと唾を飲み込む。

「…まぁ、俺も深愛の寝顔写真は持ってるけどな。」

 さくっと。

 きれいに螺旋状に向けていたオレンジの皮が途中で途切れた。

「…肖像権の侵害です。」

「テメェが言うのか?」

「中也さんみたいに可愛くないですもん。」

 何言ってんだ、と。

 中也さんが台所に立つ私を後ろから抱き締める。

「寝てれば可愛いぞ。」

「起きるとブスですみませんね。」

 そうじゃなくて、と言う中也の腕の中で、剥き終わったオレンジを食べ始める。

「顔の問題じゃねェ。テメェは生意気過ぎんだよ。」

「中也さんに忠実で優秀な部下じゃないですか。」

「優秀なって自分で言うところが既に生意気だ。」

 うーん、と。

 首をひねっていると、触発されたように中也さんが首筋に吸いつく。

 この人煩悩の塊だなぁ、と。

 そんなことを考えていると、カリッと肩を噛まれた。

「…反応しろよ、つまらねェ。」

「じゃ、もっとすごいことしてみます?暴力という反応を見せますが。」

 ツンツンと。

 素っ気なくすると中也さんがひっついてくると知っているからこそのツンなんです。

 案の定「こっち向け」なんて言って、台所から私を引き剥がした中也さんは、ソファに座って私を上に乗せる。

「なに怒ってんだよ。」

「んふっ…!何言ってんですか。怒ってたのは中也さんでしょう?」

 思わず噴き出すと、中也さんは思い出したように眉をつり上げた。

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