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【文豪ストレイドッグス】愚劣なる恋愛詩

第25章 Sweet but psycho(太宰治)


 上半身を起こしたまま、不貞腐れたような顔の彼女を見下ろすと、彼女は不満げに話を続ける。

「獣みたいな、今にも襲ってきそうな目でこっちを見るくせに、絶対に手は出してこない。私がどれだけ悩んだかなんて、太宰さんにはわからないでしょ?」

「…わ、私、そんな目で深愛君を見てたかい…?」

 同様のあまりおかしな抑揚のついた声で問うと、彼女はプイッとそっぽを向いてしまった。

「そしたら今日はほんとに襲いかかってきて。なんなのもう。」

「それは…!君が隣であんなことをするのだから仕方ないだろう…?」

「聞いてたんですか、悪趣味ですね。」

 真っ赤になるでもなく、ただただ怒る深愛に、しまった、はめられた、と私は頭を抱えた。

 彼女の声は聞こえてきたのではない、聞かされていたのだ。

 押さえつけていたのは私だけではなかったのだ。

 彼女もまた、煮え切らない私に業を煮やし、そして…。

 ばたっと布団にたおれこみ、私は恨めしげに彼女に言った。

「君のせいで私に弱点ができてしまったじゃないか。人を愛することは、強さを手放すことだよ。」

 私の髪に指を差し入れ、私の頭を撫でながら、彼女はふふっと笑った。

「…私は今、無敵な気分なのに?」

「…無敵?何を言ってる?君はもう僕を切り捨てられない。僕は君の弱点になる。そして逆もしかりだ。僕はもう、君を切り捨てられない。君は僕の弱点になる。」

「バカね。」

 そういった彼女は、本当に無敵そうに笑った。

「…それを守りたいから人は強くなるんですよ。」












(敵わない?そんなこと、もうずっと前からわかっていたさ。)

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