第18章 Nobody(織田作之助)
そんなこと言っても寝れるわけ無いでしょう?
だって織田作に抱きしめて眠ってもらわないと安心できないもの。
そう思って待っていると、十数分後、織田作はやってきた。
「…寝ていろといったろう?」
予想していたのか。
彼に苦笑されながら、私は織田作に両手を伸ばす。
「…欲求不満ですか?」
「……なんのことだ。」
織田作は私を抱きしめながら視線をそらす。
「織田作は掃除に十分もかけません。私と一緒にお風呂入って興奮したんでしょ?」
抱いてもよかったんだよ、と言う意味を込めて体を押し付けるが、織田作は一瞬迷ったように…と言うより扇情されたように喉を鳴らしたが、次の瞬間には強靭な意思を持って理性を全面に押し出してきた。
「……知らない振り、というのを知っているか?」
「愛しい恋人に嘘をつくなんて!」
お前は時々太宰に似ているよな、といった織田作に顔をしかめると、そういうところは中原幹部似だ、と言われる。
「…まぁ、今日は本当にいいさ。お前に倒れられたら俺はクビだからな。」
ベッドに倒れ込みながら言った彼に、私は笑う。
「専業主夫に転職だ。」
「…それも悪くないな。」
織田作が私を抱きしめながら言う。
「もう寝ろ。明日は何時だ?起こしてやるから。」
「五時…。」
「はいよ。」
なんだか夫婦みたいだな~、と。
そう思っていると、織田作が「あんまり煽るんじゃない」と唸った。
「…口に出てた?」
「バッチリな。」
「…知らないふりとか。」
「愛しい恋人に嘘をつくなんてできないからな。」
んふふ、と笑い、私は目を閉じる。
織田作の腕が体に回る。
「…ゆっくり休め。おやすみ。」
その言葉に引き込まれるように、私は眠りへと落ちていった。
(貴方じゃないと、もう駄目なの。)