• テキストサイズ

【文豪ストレイドッグス】愚劣なる恋愛詩

第18章 Nobody(織田作之助)


 思うに、織田作ほど私を甘やかしてくれる人はいないと思う。

 そりゃ中也さんや姐さんも、私には砂糖かってくらい甘い。

 ほかの構成員が不満を垂らしても、「深愛だからな」で済ましてしまう横暴さで私を甘やかす。

 けれど、それはひとえに付き合いの長さと比例しているわけで。

 それに、マフィアとしては他の誰よりも厳しい。

 今ではそういうこともほとんどないが、作戦で失敗すれば、容赦なく折檻行きだ。

 泣こうが喚こうが、気絶しようが許してもらえない。

 けれど、織田作は本当に、心底私に甘い。

 マフィアとして私を見る代わりに、女として私を見て、甘やかしてくれる。

 シャンプーがお湯で流され、私が体を洗っている間に織田作が服を脱ぎ捨てる。 

 そして同時に身を沈めたバスタブの水は、ゆっくりと膨らんで表面張力の膜を弾けさせる。

 後ろから私を抱きかかえた織田作が、心配そうに言う。

「お前少し痩せたんじゃないか?」

「目指せナイスバディ。」

「…言い方を変えるか。やつれたんじゃないか?」

「昨日お昼しか食べてない。」

 中也さんにハンバーガー買ってきてもらいました、と言うと、ふつうお前が中原幹部に買ってくるのでないのか?と織田作が訝しむ。

「…いや、まて、俺が言いたいのはそう言うことではなくて…。お前、もう少し食べたらどうなんだ?睡眠も取れていないようだし…。」

「心配?」

「当たり前だ。」

 きっぱりと言い切られ、私はんふふ、と笑う。

「笑うな、俺は真剣に心配しているんだぞ?」

「わかったわかった。明日からご飯は食べる。」

「睡眠もとれ。」

「そんな暇ないの…。ちょうど決済の時期だから、去年一年の活動費用の計算と確認を…。」

/ 133ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp