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【文豪ストレイドッグス】愚劣なる恋愛詩

第17章 Cold water(福沢諭吉)


 温泉と食事だけ取って帰るという友人、真人と共に湯に浸かると、彼は早速話し出した。

 昔の深愛は孤児院脱走の常習犯だったこと。

 トマトが嫌いで毎回残していたこと。

 体を動かすことは得意だったが、数学はテンで駄目だったこと。

 気分にムラがあり、怒るとものすごく怖かったこと。

 様々な話を聞くうちに、彼女が今の彼女になるまでに、多くの苦労を重ねたことがうかがえた。

「一緒にいたのは三年くらいですかね。異能が覚醒して、深愛は引き取られていきました。」

「…そうか。私が彼女に会ったのは、与謝野先生を正式に迎え入れてからだな…。」

 与謝野先生が彼女を引き取ったのは、彼女が十六歳の時だったと聞いた。

「まぁ、巧くやってるんだろうなとは思ってましたけど、まさか福沢さんの恋人になっているとは…。」

 そう言った彼に、私は苦笑する。

「私も出会った当初は、こうなるとは思っていなかった。」

「へぇ。けどよっぽど好かれてんですね。あいつの顔、緩みっぱなしですもん。」

 そう言った真人が笑い、私も笑った。

 風呂から上がると、深愛はまだ出てきておらず、半時もしたあとやっと上がってきた。

 白い浴衣を着た深愛は、散々真人に私に変なことを吹き込まなかったか聞いていたが、やがて気が済んだように歩き出した。
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