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【文豪ストレイドッグス】愚劣なる恋愛詩

第16章 West Coast(芥川龍之介)


「んぁー!もう、やってらんないよ!」

 部屋に帰って来るなり叫んだ深愛に、一瞬驚いて固まる。

 あの会議から少し経ったある夜のことだ。

「深愛、酔っているのか?」

「よってるのはちゅーやさんですー。わたしじゃないもん。」

「酔っているんだな。ちなみに中原さんはどうした?」

「おいてきたー。」

 僕は黙って部下に中原さんを回収しに行くようにメールを打つ。

 ベッドにうつぶせに倒れ込んだ彼女の元に歩み寄ると、隣に腰掛ける。

「……うまくいかないのか。」

 僕がそう問いかけると、深愛は顔をこちらに向け、僕を見る。

「…さいあくなの。」

「最悪なのか。」

「…うん。」

 そう言ったきり黙った彼女の言葉を待つ。

 隣に横になり、髪をなでてやると、彼女はポツポツと話し出した。

「…だってさ…私の本分は催淫系の異能なわけだよ。それを持ってない人に、どうやって情報を吐かせるか教えろなんて言われたってわかんないもん…。」

 それこそ黒蜥蜴にやらせるとかさー、と彼女はむくれる。

「…中也さんは中也さんで悩んでるみたいだから相談もしにくいし…ていうかしようとすると愚痴大会になっちゃうし…。」

 それがこのざまか、と僕は納得する。

 どうせ「あぁー!やってらんねェ!飲むぞ!」とか言って、二人でワインを煽ってきたんだろう。

「…深愛の最大の強みは強靭な精神力だろう。どんな残酷な拷問も顔色一つ変えぬし、甘言を与えるのも上手い。駆け引きの仕方を教えればいいのではないか?」

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