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【文豪ストレイドッグス】愚劣なる恋愛詩

第16章 West Coast(芥川龍之介)


 思わず納得していると、否定しろよ、と中原さんガ睨む。

「大体、深愛の能力があれば男はペラペラしゃべんじゃねェか。こいつが能力使って『教えてください』っておねだりすりゃあ、誰だって逆らえねェ。」

「首領も意地が悪いですよね、苦手だから能力で補ってるのに。それを専門とした組織を育てろだなんて。」

「わっちも今回ばかりは人事ミスに思うがのう…。」

 ゆらゆら。

 ゆらゆらと。

 三つの煙が揺れる。

 煙管を持った姐さんと。

 同じ銘柄の煙草を咥えた中原さんと深愛と。

 なんとどんよりとした、陰鬱な雰囲気だろう。

 よっぽど嫌なのだと、中原さんの寄せられた眉と、首を傾げて眉間にしわを寄せる深愛を見て察する。

「…あーあ、太宰さんがいれば勝手にやってくれたろうに。」

「深愛、それは禁句じゃ。」

「だって、秘密を吐かせることならあの人の右に出る人はいないじゃないですか。中也さんなんていくつ黒歴史を握られているか。」

 そうぼやいた深愛に、中原さんがにらみを利かせる。

「テメェ。あの青鯖の話はやめろって言ってんだろうが。それに俺だってあいつの黒歴史ぐらい知ってる。」

 話がそれているな、と思うながらも黙っておく。

「あーぁ…中也さんに太宰さんぐらいの頭があればなぁ!」

「ぶっ殺されてェのか、テメェ!!」

 どうやら中原さんに八つ当たりして全てを享受することに決めたらしい深愛を横目に、僕は考える。

 今日の夜は深愛の愚痴で寝るのが遅くなるに違いない。
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