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【文豪ストレイドッグス】愚劣なる恋愛詩

第16章 West Coast(芥川龍之介)


 んー、と言い、深愛がこちらを向く。

「…そうなのかな。」

「あぁ、僕はそう思う。」

「…そっか、じゃ頑張る。」

 そう言うと、彼女は僕を引き寄せた。

 そして僕の胸元に額を押し当てると、龍、と笑う。

「ありがと。」

「僕はなにもしていない。」

「もー、照れ屋さんだなー。」

「別に照れているわけでは…お前酔っているな?」

 よってませーん、と言いながら彼女は笑う。

「…ふふ、あはは、んふふふふ!」

 何もないのに笑う彼女は、どう見ても部屋に帰ってきたときより泥酔している。

「…なぜさっきより酔いが回ってるんだ…。」

「なんか龍に会ったら突然ふわふわしだしたのー。」

 そう言った彼女に、一体どういう意味だとばかりに口を開くが、言葉は彼女の口内に吸い込まれていった。

「…酒臭い…。」

「ちゅーやさんほどのんでないもーん。」

「今の自分以上に酔った上司を置き去りにしたのか。」

「死ぬ前に龍に会いたかった…。」

「なんの話をしているんだ…。」

 もういい、寝ろ、と布団をかぶせると、それにくるくると丸まる。

 僕の場所は残しておけだとか、もうそんなことはどうでもいいから、この泥酔した深愛を寝かせなければ。

 僕は上着を脱ぐと、電気を消す。

「龍どこー?」

「ここだ。」

 布団ごと彼女を抱きかかえ、僕は目を閉じる。

「早く寝ろ。」

「…んー…もうちょっと…。」

 何がもうちょっとなのか。

 それが明かされることはなく彼女から寝息が聞こえ始める。

 僕はクスリと笑いを漏らし、深愛を抱きしめた。

「おやすみ。」










(安心したら回る酔い)

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