第15章 【R18】Body moves(中島敦)
するするとグレープフルーツの皮をむき、食べやすい大きさに切って持って行くと、彼女は布団の中でうつぶせになって食べ始める。
リスのように頬袋に詰めこみ、幸せそうに平らげていく。
そして、卵粥にも手を着けた。
「…手作り?」
彼女が尋ね、僕はうなずく。
「口に合うといいんだけど。」
「美味しい。」
それはよかった、と、言いながら僕は彼女を見る。
瞳が潤んでいたり、肌が火照っているのはもちろんのこと。
しかし、子どものように素直な言葉と、可愛らしい我がままは、彼女が弱っている証拠だろう。
黙々と卵粥を食べる様子からは、いつもの年不相応に大人な余裕と、てきぱきした動きは見られない。
「ごちそうさま…。」
「お粗末さま。」
すっかり完食したことに安心し、僕は食器を片づける。
布団の上にぺたんと座ったまま、どこを見るでもなくぼーっとしていた彼女に、僕は声をかける。
「他にしてほしいことはある?」
「…汗気持ち悪い…。」
ばんざーい、と腕を上げた彼女に、僕はぎょっとする。
「え、え、えっと…ぼ、僕は着替えもって来るから…。」
「ぬげない。」
「えぇ!?なんで…。」
「…ぬげない…。」
体が思うように動かないらしい。
自分でやってみせた彼女は、確かに服が脱げないようだった。
「ちょ…ちょっとまってて…おしぼりと着替えもって来るから…。」
お、落ち着け、僕。
彼女は弱ってるんだぞ、と。
言い聞かせて彼女の元に戻る。
「…ん。」