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【文豪ストレイドッグス】愚劣なる恋愛詩

第15章 【R18】Body moves(中島敦)


 合い鍵で中に入ると、彼女は布団を足に挟んで眠っていた。

 これじゃ布団の意味ないじゃないか、と笑い、僕はなれた手つきで予備のタオルケットを彼女にかける。

 この状態の彼女は、起きるまで絶対に布団を脚から話さない。

 七分丈の裾から覗いた白い足首に一瞬つばを飲み込むが、それをタオルケットを引っ張って覆い隠し、僕はキッチンに立つ。

 すぴー、すぴー、と子どものような寝息を立てる彼女を起こさないように細心の注意を払いながら、卵粥を作る。

 そうして布団のそばに持ってきたところで、彼女が呻き声をあげた。

「んぅ…あつし…?」

「…おはよう、よく寝てたね。」

 未だに布団を離さないあたり、寝ぼけているのかもしれない。

 僕とは真逆の方向に手が伸ばされ、僕は立ち上がってそちらに回り込む。

「…深愛?」

 その手を取ると、彼女はパチッと目を開いた。

 そして。

「…1日フルーツ食べてないせいで禁断症状が出そうです…。」

 思わず噴き出し、僕は彼女の指に僕の指を絡める。

「禁断症状?」

「体がよじれて逆立ちしちゃうアレ…。」

「…りんごあるけど。」

「さすがぁ…。」

 ふにゃ、と笑った彼女に、グレープフルーツもあるよ、と言うと、それならそっち、と答えだ。

「グレープフルーツで禁断症状治るの?」

「私は死神じゃないからいーの。」

 微妙に呂律が回らない声で彼女は言う。

「はやくちょーだい。」

「卵粥食べてからにしたら?」

 僕がそう言うと、彼女は首を振る。

「ヤだ。」

「ヤだって…。」

「卵粥食べてる途中に体ねじれちゃう…。」

「ん゛んふ…っ!」

 噴き出して、僕は立ち上がる。

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