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【文豪ストレイドッグス】愚劣なる恋愛詩

第13章 We don't talk anymore (太宰治)


 やっぱり駄目だな、なんて。

 だって全然忘れられない。

 膿を出すどころか逆戻りだ。

 そんなことを思いながら、懐かしいバーで一人アルコールに浸る。

 幸せだったあの頃の気持ちに戻れるかな、とか思ったり。

 あーあ。

 もう最悪だよ。

 敦君があんなこと聞くからだよ。

 なんて八つ当たりも甚だしい。

 最近ここに毎晩通っているからか、すっかり常連に逆戻りで。

 織田作来ないかなぁ、とか。

 まぁ、死んでしまっているんだけれども。

 じゃあ、安吾?

 立場上、無理だろうなぁ。

 もう中也でもいいから来ないかな。

 なんか、あの頃の人に会いたいわけだよ、私は。

 半ばヤケクソで酒を煽っていると、扉のベルが鳴った。

「マスター、いつもの。」

「はいただいま。」

 驚いた。

 聞き覚えのある声だった。

 そして、一番聞きたかった声だった。

「深愛…。」

 思わず声に出すと、彼女は首を傾げた。

「あれ、太宰さん。」

『太宰さん』。

 あぁ、そうか。

 もう昔のようには接してくれないのか、と。

「…探偵社社員との密会ですか。中也さんにでも連絡しますかね…。」

 少し離れたカウンターに座り、彼女が言う。

 ザクリ、ザクリと。

 一言一言が私の心をえぐる。

 そうだ、私は探偵社社員で、彼女はマフィア幹部の右腕だ。

 けど同時に、元恋人でもあるわけだよ。

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