第13章 We don't talk anymore (太宰治)
乱歩さん、与謝野先生、そして国木田君の辛辣な言葉に、敦君や谷崎君、賢治君まで頷くのだから、私ってどんなに信頼されていないんだろう。
よよよと泣きながら、私は話し出す。
「彼女はかつての相棒の右腕だったんだよ。よく仕事のできる子でねぇ、しかも相当美人だ。」
「顔で選んだんですね。」
賢治君、それは語弊がある。
そんなことを言いながら、私は続ける。
「けど私がその職場をやめて…まぁ、仕事柄二度と会うことはなくてね。というか会えなくて。」
一体君は今、何をしているんだろうね。
膿を出すのも辛いのだと。
話しながら思う。
一度だけ、彼女を見かけた。
横浜のネオン街で、楽しそうに歩いていた。
もちろん隣には中也がいてさ。
悔しいけど、一晩じゃなく、長期的な恋人としてなら、中也の方が一枚上手だ。
私のように傷つけることでしか愛せない馬鹿ではないから。
けれど、君だけは違う。
私だって、真綿でくるむように大切にしていたさ。
伝わってたかなんて、いまさら確認のしようもないけど。
黙り込んだ私にみんなが気遣うように散っていく。
あーあ。
ねぇ、深愛。
君は今、誰の隣にいるんだい?