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【文豪ストレイドッグス】愚劣なる恋愛詩

第10章 Let me love you (中原中也)


 中原は失笑を漏らした。

「…ははっ、こらァまた別の意味でヤベェな。」

「んふっ、ふふふ…!」

 完全に正気を失っている深愛を見て、中原はあきれの表情を浮かべた。

「おいおい、俺の愛だけじゃ不満だってかァ?」

 人に愛される快感というのは、時として、肉体的な快感を上回る。

 男共が自分を乞い、求め、そして果てていく。

 時には愛を叫ばれ、恍惚とした表情で見つめられる。

 これに快感を得ない女など、どこにいよう?

 普段は中原の愛でいっぱいいっぱいだ、と喘ぐ深愛も、やはりどうしようもない女の性というものはもっているのだ。

「ふふ、あははっ、もっと!もっと私を愛して!」

 彼女が一歩を踏み出せば、また男共が倒れていく。

 その前に回り込み、地面を踏まないように気をつけながら、中原は深愛の頬にふれる。

「深愛テメェ。堂々と浮気宣言かァ?正気に戻れ。テメェは俺以外から愛を求めるほど飢えちゃいねェだろーが。」

「んふっ、ふふふ!」

「聞こえてすらいねェのかよ。」

 焦点の合わない目にため息をつき、中原は深愛の視界を奪うように目をふさぐと、その唇に吸いつく。

 舌を差し入れ、口内を暴れまわってやれば、かくっ、と深愛の体から力が抜けた。

 くふふ、と笑いを漏らし、中原は深愛を見下ろした。

「快楽を与える能力者も快楽には弱いわけだ。皮肉なこった。」

「ちゅ、や…さん…。」

「敵組織の方は俺が何とかしておく。もう寝てろ。」

 中原の声に誘われるように、深愛が目を閉じたのを見て、中原は囁く。

「…テメェは俺だけ愛してりゃいいんだよ。」
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