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【文豪ストレイドッグス】愚劣なる恋愛詩

第10章 Let me love you (中原中也)


 ぶわぁっと吹いた突風に、殺しあいをしていた人間たちが一瞬止まる。

 彼女の後ろから、キリスト教の、それも最も戒律の厳しいクエーカーの修道服をまとった美女が現れ、深愛の中に吸い込まれていく。

 調べたところによれば、深愛の家系は魔女狩りて追放された白人の家系らしい。

 代々一族の女性には催淫系の異能力が与えられるらしく、深愛も例に漏れず、授かったわけだが、その異能柄、忌み疎まれることも多かった彼女の家系は、彼女の前の代で大虐殺にあった。

 そうしてどうにか生き延び、孤児となってスラムをうろついていたところを、ちょうど紅葉の姐さんに拾われて二年ほどの中原が拾った。

 催淫系は組織にいなかったため、首領からも重宝され、マフィアとして一流に育てられたのだが。

「くくっ…相変わらずタチの悪ィ異能だぜ。」

 思わず笑ってしまう。

 彼女がビルの非常階段を降り、地面に足をつけた途端、波紋のように白く光る輪が広がっていく。

 一歩歩くごとに広がる波紋が、周りにいた人間たちを飲み込んでいく。

 宙に浮いてそれを眺めながら、中原は恍惚とした表情で倒れていく男たちを嘲笑う。

「ったくよォ…俺の女を白飯の共にするなら金払えってんだ。」

 深愛の異能力強化形態は、強い催淫効果をもたらし、彼女の能力の波が届く範囲の男共に死すら感じさせるほどの快楽を与える。

 行き過ぎた快楽は苦痛となり、やがて昏睡状態に陥る。

 欠点と言えば、女性とまだ肉体的に未熟な子どもにはきかないことだが、この業界で前線で殺しをする女というのは少ない。

 それも深愛レベルの実力を持つマフィアに女は滅多にいないため、ぶつかることも少ない。

 最悪そんな女が出てきても、ポートマフィア一の体術使いにしごかれた深愛に素手で押し負けるのが見えているため、大概は既に心に決めた相手のいる男が出てくるのだが…。

「おいおい、テメェは既婚だろォよォ?」

 白目をむいている男の指にハマった婚約指輪を見て、中原は笑う。

 その男の手から子供の手形が消え、どうやらQの暴走が深愛によって止められたのだと理解する。

 しかし足元を走る光の輪は止まらない。

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