第8章 Stay (中原中也)
「…寂しいのかよ。」
「はい。」
躊躇うことなく答えると、彼は訝しげにこちらを見た。
「…気持ち悪いくらい素直だな。どうした?」
「…わかりません…。ただ、なんでか寂しくて死にそうです。」
ぎゅうぎゅうと体を押しつけると、彼の喉が上下した。
「…あー…駄目だ。離れろ。」
「ヤです。」
「嫌じゃねェ、離れろ。」
「ヤです。」
「俺が遅刻するだろうが…っ!」
さらに強く腕を巻きつけ、私は彼をここに留めようと足掻く。
「中也さんは五大幹部ですし、重役出勤が許される立場です。急ぐ必要なんてないでしょう?もう少しでいいんです。もう少しだけ、一緒にいてください。」
中也さん、と名前を呼べば、彼の手が葛藤するように私の脇をなで、Tシャツを掴む。
「…………あーっ、くそっ…!」
彼がそう叫んだ途端。
私は彼の腕の中にいて。
彼は仕事着のままベッドに横になっていた。
「…テメェ、能力使ったな?」
「恋人に対しては無条件で発動しますけど…そう言うことではなく…?」
「…無意識かよ…。」
んっとにタチ悪ィ能力だぜ、と言った彼に、私はニヤリと笑う。
「単に中也さんが私の生シャツ&彼シャツに興奮しただけでは?」
「それもある。」
あ、否定しないんだ、と笑いながら、私は彼の指に自分の指を絡めた。
きゅ、と彼の指先に力が入り、私はふふ、と笑う。
「…能力のコントロールが出来ていないのかもしれません。」
「は?」
素っ頓狂な声を上げた彼に、私は続ける。
「昨日愛されすぎて、異能が暴走しちゃったのかも。」
「…あー…、なるほど。」