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【文豪ストレイドッグス】愚劣なる恋愛詩

第8章 Stay (中原中也)


 ポートマフィアの数あるセーフハウスの一つ。

 真っ青な海を臨むその場所は、彼と私のお気に入りだった。

 そして今はそこに居を構えているわけだけれど、同じ家にいても、つとめる場所は同じでも、仕事は別々なわけで。

 まだ日も昇らない明け方。

 あぁ、今日は朝から仕事なのか、と。

 私を起こさないように気をつけながら身支度を整えている彼を見つめる。

 残念ながら、ベッドから温もりが消えたら起きちゃうんですよ、なんて。

 大方夜遊びに明け暮れたお偉いさんの始末とか、そんなところだろう。

 私の仕事が始まるまであと四時間。

 私が起きるまで、あと三時間。

 起きたら一人。

 朝ご飯も一人。

 出社も一人。

 寂しい…なんて。

 わがままだとはわかっているけれど。

 寝たふりをしながら、彼の気配を探っていると、彼が静かに私の前髪を払った。

 優しく頬がなでられて、泣きたくなる。

 行かないで、と。

 無理だとわかっていても、言いたくなる。

 なかなか離れない手に、もしかして伝わった?なんて。

 目を閉じたままぎゅっと彼の首に手を回し、体重をかけてベッドに連れ込む。

「…テメェ、いつから起きてた?」

「…中也さんが首もとのキスマークをどうやって隠すか模索しているあたりから…ですかね。」

「ほぼ最初っからじゃねェか。」

 悪態をつきながらも、彼に逃れようという意志は見られない。

「お前朝の方が大胆なんじゃねェか?気づいてんのか知らねェが、お前今、昨日俺が着せたブカブカのメンズTシャツしか着てねェんだぞ。」

「…んー…まぁ、けどそれで中也さんが興奮して出社遅らせてくださるなら、この格好も甲斐あったってものです。」

 私が彼の髪に指を通し、首もとに顔を埋めると、彼が私の背に腕を回した。

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