第6章 How deep is your love? (福沢諭吉)
はやし立てられながら外に出ると、私は社長に買ってもらったレモネードを飲みながら、社長は煎れたてのコーヒーを啜りながら、ベンチに座る。
「…お前は普段、実は結構子供っぽいところがあるのだな。」
乱歩ほどではないが、と言った社長に、私はサァッと青ざめた。
そう言えば、売人と話すときや、果物をもらったとき、ついついはしゃいでしまっていた気がするし、悪態なんかもついていたような…。
着物で少しは大人っぽく見せられたかと思ったが、元の年齢に逆戻りだ。
着ていなかったら高校生にすら見えていたかもしれない。
ズズッとレモネードを啜った私に、社長が柔らかく目を細めて言った。
「私と恋人になってから、お前はぐんぐん大人びていったが、私はそれがいささか寂しくもあった。しかし、太宰や乱歩と話すときは昔のままのお前に見えたし、私のせいで無理をさせているのかと悩んだりもしたのだが…。」
「え、…えっ!?」
私がストローから口を離して叫ぶと、社長は一瞬視線を逸らしたが、また私を真っ直ぐ見つめる。
「…いや、正直私より乱歩や太宰の方がいいのでは…と、歳不相応に妬いたりもしたのだが…。お前は本当に無理はしていないか?」
「……………。」
思わず口を開けたまま固まって、私は心の中で呟く。