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【文豪ストレイドッグス】愚劣なる恋愛詩

第4章 【R18】Into you (中原中也)


 肩で息をしながら、深愛は中原の恍惚とした表情を見上げる。

 ズルリ、とそれを引き抜き、深愛の横に倒れ込んだ中原もまた、その引き締まった体を上下させて呼吸を整えている。

 それでも意識的にか無意識にか、深愛の頭を引き寄せ、自分の胸へ押し当てる。

 中原の鼓動がダイレクトに伝わってきて、なんだか胸がいっぱいになってしまう。

 そうすると、なんだか物足りなく思えてきて、深愛は中原の首に腕を力いっぱい巻き付け、その首筋に小さな赤い花を咲かせる。

「はっ…なんだ、どうした…?」

 可笑しそうに笑った中原の瞳に、あぁ、愛されているな、と感じてしまう。

 それだけでもういっぱいいっぱいで、愛に限界なんてないと思っていたのに、これ以上は無理だと悲鳴が聞こえたような気がした。

 これ以上彼を愛したら、私は壊れてしまう、と。

「…壊れそうだ。」

 煙草に火をつけた中原が呟いた言葉に、思わずびくっと肩を揺らす。

 その整った横顔を見上げると、中原がぼんやりと呟くように言った。

「…どんなに愛しても愛したりない、なんて口説き文句はよく聞くが、俺はもうこれ以上は無理だな。これ以上は俺がおかしくなっちまう。」

 同じことを考えていたんだ、と気づくと、煙草の苦味が残るその唇に、吸いついていた。
 
 中原も、ベッドサイドの灰皿に煙草を置くと、深愛の首と腰に腕を回してそれに応えてくれる。

「…苦しいです。」

 唇を離した途端、泣きそうな声で言った深愛に、中原が「俺もだ」と笑った。

 その笑顔が愛しくて愛しくて。

 とうに容量なんて越えてしまった愛は、溢れ出して海になっていく。

 それに溺れているから、こんなに息が苦しいのだと。

 深愛は中原にしがみつきながら、ぼんやりとした意識の中思った。





(後戻りができないくらい、深く深く沈んでいく)

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