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【文豪ストレイドッグス】愚劣なる恋愛詩

第4章 【R18】Into you (中原中也)


『こんなことしたら、奥さんに怒られますよ。』

『秘密にすればバレないから…こっちおいで。』

 耳元のマイクから聞こえるのは、男を誘う、甘い甘い女の声。

 その相手が自分でないことが、こんなにももどかしいとは。

 イライラと足を揺すりながら、中原は突撃の機会をうかがう。

『…君は綺麗だよ…その見透かすような瞳も、潤った唇も…全てがこの世のものとは思えないくらい。』

 クセェ口説き文句使いやがって、と中原は舌打ちする。

 その女は俺のだぞ、と叫びたくなるが、任務は任務だ、と扉の前で拳を固めた。 

『そうですね…貴方もきれいですよ。けど、私思うんです。命は儚いから綺麗なんです。』

 衣擦れの音と、ベッドのきしむ音がした。

 今だ、と中原はドアを蹴り破り、重力操作によって何十倍にも重くなった、渾身の蹴りを男に見舞う。

 三秒もかからなかっただろう。

 意識をなくした男をもう一度確認のために蹴飛ばすと、外で待機していた部下たちが縛って連れて行く。

「お疲れさまです、中也さん。」

 飄々と言った、薄い布を纏った女を見て、中原は舌打ちをした。

「これだからテメェの異能は嫌なんだっつーの。なんで俺の愛が異能を経由して他のヤローに注がれてんだ。」

「バカ言わないでください。愛なんてこれっぽっちもやってません。強いて言えば、マフィアのこわーい報復を与えてやりましたけど。」

 スラムで拾い、中原直々に一から育て上げた中原の一番の部下である深愛は、ニヤッと怪しく笑って見せた。

 その惜しげもなくさらされた白い肌に、先ほどまであの男がさわっていたのかと思うと、吐き気が止まらない。

 何せ彼女は、中原の一番の部下であるとともに、彼の恋人でもあるのだから。

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