第3章 Hands to myself (江戸川乱歩)
「ふぅ~…いいお湯だ。」
「ぬる過ぎですよ。身体冷えちゃいます。ちょっと温度上げましょうよ。」
「だーめ!これ以上上げたら、僕火傷しちゃうから。」
後ろから深愛を抱きかかえながら、湯船につかる。
かぽーん、という効果音が付きそうなほど、ゆったりとした時間が流れる。
「今日もお仕事お疲れ様でした~。肩揉みますか~?」
のんきにそんなことを言って、彼女がこちらを向く。
あーあー。
そんな密着しちゃってさ。
僕の葛藤とかわかる?
ここで襲ったら本当に風邪ひいちゃうだろうなぁ、とか、実はちゃんと考えているわけだよ。
それをまぁ、よくもこう逆向きに煽ってくれるよね。
こうなるともう、据え膳いただきますって言っても、地獄には落ちないと思うんだ。
けれど、なんかやっぱり気にかかるんだよね。
僕がこんなふうに思うのって、君の異能のせいなの?とか。
君が異能を使えてるのって、僕以外の誰かからの愛のおかげなんじゃないの?とか。
「乱歩?」
「……ここで呼び捨てとかずるいよね。襲ってほしいの?」
「名探偵は、人のごまかしは見抜けても、自分がごまかすのは下手だね。朝から何悩んでるの?」
…もう色々反則だよ。
なんで全部わかってしまうんだろう。
君にも超推理の異能があるの?なんて。
まぁ、今回については僕がわかり易すぎたんだろう。
彼女の胸に顔をうずめると、なんかやらしいです、と恥ずかしそうに身を捩られる。
それをがっちりホールドすると、僕は不満の種々をこぼし始めた。