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【文豪ストレイドッグス】愚劣なる恋愛詩

第25章 Sweet but psycho(太宰治)


 悶々とした気持ちで部屋に戻ると、私は薄っぺらい布団に身を投げ出した。

 薄い壁越しに聞こえる生活音。

 包丁の音、風呂に浸かる音、ドライヤーの音、布団を敷く音。

 逃れられない、彼女の呪い。

 認めたら終わりだなんてことはわかっているのだ。

 認めてしまえば、私は彼女を切り捨てられない。

 彼女は私の弱点になる。

 それでも愛しくて愛しくて。

 押さえつけ続けた欲望は、彼女のたてる些細な音にさえ反応する。

 扉が開く音がして、彼女が帰ってきたのだと悟る。

 また地獄のような夜が始まる。

 彼女のたてる音に包まれて、マグマのような熱をもてあます夜が。

 私はそっと壁に体を寄せ、彼女のたてる音に身を委ねる。

 いつもなら、彼女はすぐに夕食の準備をする。

 けれど、今日は何か様子が違った。

 少し乱れた呼吸と衣擦れの音。

 そしてそれは、甘い響きを帯びていった。

「…深愛くん…?」

 隣は彼女一人の気配しかない。

 つまり…。

 水音が聞こえる。

 ンッ、と切羽詰まったような声が聞こえ、思わず私は熱をもった自身に手を伸ばした。

 熱く固くなるそれをゆるゆると撫でれば、背筋がゾワゾワするような快感が身体中を駆け巡る。

 足りない、足りない。

 もっと熱い何か…!

 絡みつくような、ネットリとした蜜壺に身を沈めたい。

 激しく律動し、互いの体が震えだすほどの快楽が欲しい。

「アッ…んんっ…ふ…ぅ…!イッ…イッッ…!」

 薄い壁越しの水音はさらに激しくなり、私はむしり取るようにベルトを外す。

 そして自身を扱こうとした、その瞬間だった。

「アッ…やぁ…だ、太宰さん…っ!」

 ガタッと音がして、彼女の力尽きる音がした。

 カノジョハイマ、ダレノナヲヨンダ?

 かぁっと熱くなった身体に、もう頭など働いていなかった。

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