第23章 The heart wants what it wants
「深愛もよく言ったよね、殺して、なんてさ。仮にも恋人だろう?」
「…潤くんが死ぬなら私は生きていたくないですし。それに潤くん以外の人には殺されたくないですから…。」
たとえ殺されるとしても、と私が笑うと、潤くんが私にすがりつくように抱きついてくる。
生暖かい社員の目から視線を逸らしながら、私は微笑む。
「お兄様も、そんな恋人という関係に不安を感じるのでしたら、さっさと腹を括ってしまえばいいのですわ。」
ナオミちゃんが私と潤くんの間から顔を覗かせる。
「さっさと深愛ちゃんの名字を谷崎にしてしまえばいいんですのよ。」
「な、なな…ナオミちゃん!?」
思わず真っ赤になってナオミちゃんを見るが、いたってまじめな顔で。
「…それもいいかも…。」
そういって顔を上げた潤くんに、さらに真っ赤になる。
「え、え、まって。」
「…深愛…僕とけっ…。」
「わ、私、お風呂入ってきます!!」
部屋を飛び出した私の頬は赤い。
あーあ、逃げられてしまいましたわね。
精進するんだね、谷崎。
脈あり脈あり。
そんな会話が後ろから聞こえるが、全力ダッシュする。
少し離れた場所で熱を冷ましながら、私は思う。
けど、いつかちゃんと返事はするからね、と。
私も大好き、結婚しようって。
(願わくば、最期は彼とともに。)