第23章 The heart wants what it wants
「ヘェ、悪夢に閉じこめ、精神を崩壊させる能力的だったの。」
乱歩さんの言葉に、潤くんが頷く。
「大切なものを自ら破壊しなければおけないんです。何度も何度も。」
「大切なもの…?例えば?」
太宰さんの問いに、彼は少し居心地が悪そうに目をそらした。
「…最初はナオミでした。けど、夢の中で殺しても、ナオミが妹であることには変わらないですし、殺したんです。けど、そうしたら今度は深愛を殺せと言われて…。」
できませんでした、と。
そう絶望を潜ませた潤くんに、私は下を向く。
「だって、深愛は僕が何もしなくても恋人なわけじゃない。深愛が好きで、深愛に好かれたいと思っているから恋人でいられるわけで…。何度も深愛を殺した。いろんな方法で。けど、夢の中で君を殺した、なんて言った時を考えたら…。」
それはつらかったね、と。
敦君が言って、潤くんが涙を落とした。
「…それで、深愛はどうやって谷崎の目を覚まさせたんだい?」
与謝野さんの言葉に、私は口を開く。
「私を殺してって言いました。」
「……なるほど、今まで殺した結果が怖くて殺せなかったが、深愛君はそれを肯定した。これでは都合がよくなってしまう。だから悪夢から抜けたと思ったわけだね?」
そう言った太宰さんに、潤くんは頷いた。