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【文豪ストレイドッグス】愚劣なる恋愛詩

第23章 The heart wants what it wants


「…潤くん…。」

 私の声に、ビクッと潤くんが震える。

 それを見ながら、ぼんやりと考える。

 太宰さんは言った。

『…そのあと3日生きた人間はいないよ。みんな自殺だ。』

 潤くんが死んでしまうものなら。

 声も、感触も、体温さえ触れることができなくなるものなら。

 その絶望に、私が耐えられるのだろうか。

 無理だ。

 きっと死にたくはないけど、生きたくもなくなる。

 けど今なら。

 潤くんが後に来てくれるなら。

「…ころ、して…。」

 目から涙が溢れた。

「いっそ、…いっそ殺して、私も連れて行って…。潤くんのいない世界なんて…。」

 生きていたくないと。

 そう思って目を閉じ、力を抜いた。

 途端に潤くんが飛び退く。

「な、んで…っ、こんな…こんなの…。」

 悪趣味だ、最低だと。

 そう繰り返す彼に、苦しかった呼吸を整え、私は近づく。

 しゃがみ込んだ彼に腕を回し、顔をのぞき込むと、潤くんの目から涙が落ちた。

「深愛…僕はあと何回君を殺せばいいの…?」

「…潤くんは私を殺したいの?」

「嫌だ…もう…もう耐えられないんだ…、つらくて…怖くて…。」

「ならもう殺さなくていいよ。だから潤くんは死んじゃ駄目。潤くんが死んだら、私は生きたいと思えなくなってしまう。」

 ボロボロと涙を落とす彼が、ぐちゃぐちゃの顔のまま私を抱きしめ、キスを落とす。

 重たく降り積もっていた彼への気持ちが、彼に受け入れられていく。

 空っぽで寂しかった心が満たされていく。

 熱い温度が混ざる事に、私の心からこの世の憂いすべてが消えていくような気がした。


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