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【文豪ストレイドッグス】愚劣なる恋愛詩

第23章 The heart wants what it wants


 潤くんが昏睡状態になってから二週間。

 ほとんど家に帰らず潤くんに付きっきりの私に、社員の人たちの方が見ていられなくなったのか、ナオミちゃんと私に社内に仮住居が設けられた。

 言葉を交わすことすらほとんどないまま、私たちの時間は、一秒が永遠にも思われる速度で過ぎていく。

「…お風呂に…入ってきますわね。」

 疲れた声のナオミちゃんに、私は頷く。

「うん、いってらっしゃい。」

 ナオミちゃんが出ていって。

 一人になるとやっぱり苦しくて、谷崎兄妹がいなかったらと思うとぞっとするくらい、私は彼らに依存しているのだなと思う。

 刻々とすぎていく時間に耐えられなくて、私は潤くんに抱きついて悲痛な叫びを上げる。

「…ねぇ…っ、もう寂しいよ…!私も連れて行ってよ…っ、どんなにつらくても…っ、地獄まででもっ…。」

 私はついて行くから。

 グズグズと嗚咽を漏らし、私は潤くんにすがりつく。

 体温はあるのに。

 感触もあるのに。 

 ちっとも満たされない。

 ただただ虚しい。

「………深愛…。」

「……っ、潤くん…っ?」

 声が聞こえて。

 色のなかった世界が、寒色から暖色までじわりじわりと色を取り戻していく。

「…まだ…、まだ続けるのかよ!」

 突然そう叫んだ潤くんが私を組み敷く。

「潤くん!?」

「もう嫌だって言ってんだろ!!こんな…こんな…!!あれで最後だって言ったじゃないか!」

「潤くん、何言ってるの…!?」

 話がかみ合わない。

 絶望にとりつかれたような顔の潤くんが、私を見下ろしている。

「いいさ、そっちがそういうなら、こっちだって考えがある…!もう何度も殺したんだ!もう失うものなんて…。」

 何もない。

 そう言った潤くんが私の首に手をかけた。

 ギリギリとしまっていく手に、私はかすれた呼吸を繰り返す。

 躊躇ってる。

 彼は悲痛に満ちた表情で私を見下ろし、私の首を中途半端に呼吸させたまま締めている。

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