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【文豪ストレイドッグス】愚劣なる恋愛詩

第22章 All we know(中原中也)


 イヤだ、と。

 駄々っ子のような、その言葉だけが俺の頭を支配した。

「っ…!!」

「中也!?どこへ行く!」

 たまらず俺は部屋を飛び出し、オフィスへ向かう。

 荒々しく廊下を駆け抜け、扉を開け放つと、そこに深愛はいなかった。

「…深愛は?」

 書類を届けに来ていたのだろう。

 驚いた顔の樋口が、思わず落としてしまったらしい書類を集めながら答える。

「え、ええとですね、深愛ちゃんは首領に呼ばれたと…先ほど廊下ですれ違いましたが…。」

「…首領に…。」

 俺の様子がおかしいこと気づいたのか、樋口はそそくさと部屋を出ていった。

 そしてその直後、オフィスの扉が再び開いた。

「…深愛…っ!」

「あ、中也さん、どこ行ってたんで…わぁっ!?」

 ドサッと。

 絨毯はあっても堅い床に押し倒された深愛が、驚いたように口をぱくぱくと動かし、真っ赤な顔で講義する。

「な、なな、なにしてるんですか!仕事中です!」

 ビリッとワイシャツを破り、俺は深愛の首に吸いつく。

「やっ…ちょっ…!ほんと…どうしたんですか…!」

 中也さん!と。

 強い口調で呼ばれ、俺はハッとして深愛の拘束を解く。

「……悪ィ…。」

「…どうかしたんですか?」

 つくづく甘やかされているな、と思う。

 彼女は怒りもせず、俺を気遣う言葉をかけた。

「……引き抜きの、話が来てるって…。」

「っ…、あぁ、その件ですか…。」

 明らかに動揺し、深愛は目をそらす。

「…その、まぁ、前から何度かそう言う話は…。」

「行くのかよ。」

 自分でも、驚くほど冷たく暗い声がでた。

 目を見開いた深愛が、中也さん?と俺を呼ぶ。

「…そうだよなァ?諜報課ならお前の能力は最大限に発揮できる。必要とされてるだろうなァ。」

 けど。

 それでも。

「お前が一番必要とされているのは、他のどこでもない、ここだろうが…っ!」

 深愛を抱きしめ、俺が叫ぶと、深愛は「中也さん…」と俺を呼ぶ。

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