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【文豪ストレイドッグス】愚劣なる恋愛詩

第20章 Kiss me quick(太宰治)


「今日はそうめん茹でてみた。」

 白い手首がくいっと出汁を椀に注ぐ。

 半袖から出た腕がやけに生白い。

 夏ですねぇ、なんてのんきに言う彼女に、私はにこやかに頷く。

「そうだねぇ。」

「……治、麦茶に出汁は入れないほうがいいのでは?」

「あれ。…あー、これはあれだな。深愛がキスしてくれな…。」

「いただきまーす。」

「む…。」

 仕方なく、間違えて出汁を注いでしまった麦茶を捨てる。

 大体、仕方ないじゃないか。

 今日で4日経つのだ。

 深愛を抱けなくなってから。

 危険日は避ける、というのが暗黙のルール。

 もちろん生理中は抱けない。

 欲求不満でおかしくなりそうだよ。

 しかしながら、まだ二人がいいから、と暗に示したのは私の方だ。

 けれども。

「…ねぇ、始まった?」

「食事中ですよ。まだだけど。」

 おかしいなぁ、いつもなら始まってるのに。

 けれど気が立っているように見えるし、明日あたりには来るのかなぁ。

「あーあ、昨日抱いておくんだった…。」

「性欲モンスター。」

「食事中だよー。」

「治に言われたくないよ。」

 ぶー、と不平を漏らせば、べー、と舌を出される。

「なんだか反抗的じゃないか。」

 私が言うと、深愛は皮肉めいた笑いを漏らした。

 ブーブー、ブーブー。

 私が不満をたらたらたらたら流し続けると、食べ終わったらしい深愛が、立ち上がりながらぼそっと言った。

「……だって触られたくないんだもの。」

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