rain of jealous【黒バス/ナッシュ】
第1章 rain of jealous
膝は少し震えていた。
落ちた携帯を拾おう、なんて考えには到底至れるわけもなく、それは床の上で少しスライドし、ソファから遠退いた。
名無しの頭に今あったのは、ナッシュが抱いていた彼の腹案だ。
何を思って自分を襲い、身体にいやらしく手を伸ばしてきたのか。
そして何を思って、終話とともに真逆の顔色を漂わせ、真面目に言葉を交わしてきたのか。
勿論、こんなことをされる以上は「やる」以外に検討もつかなかったわけだけれど、それにしたってナッシュの態度は、名無しにも分かる程変わっていたのだ。
悟らせる為に、自身の機嫌を敢えて変動させたのか。
不機嫌にさせてしまった、何か理由が自分にあったからなのか。
「名無し」
「・・ッ・・・・」
きつく耳を噛まれて直後、名無しが眉を顰めると、次の瞬間振り向かされる。
「と・・・」
「?」
今までただ自分の身体を弄ぶだけでしかなかったナッシュを見上げて、名無しがそのとき彼に初めて感じたのは、やけに揺れ動く人間くささだった。