rain of jealous【黒バス/ナッシュ】
第1章 rain of jealous
「―――・・・!あ、・・ごめん・・・出れなくて・・。シャワー入ってて・・うん」
「・・・・・・」
名無しは電話に触れ、一度ソファから立ち上がりながらそれを持ち直すと、そのままの状態で耳元に携帯を宛がい発信ボタンを押した。
再び座らなかったのは、無意識にくるりと半回転して、ソファと向き合うようにその場に立ったからだ。
肘掛けに濡れたタオルを置く為に身体を前屈みさせ、腕を伸ばし、数秒後繋がった電話に対し口開く。
かけた相手は、いつもの仲の良い友人だった。
友人の声を聞くと、名無しは虚を突かれた数日前、シャンプーの件を思い出し胸をちくっとさせたけれど、このときの用件はなんとなく予想もできていた。
ゆえに、結果的に動揺を見せることはあまりなかった。
そんな彼女の後ろ姿を、ナッシュは黙って見つめていた。
「いいよ・・・ああ、そのことだよね・・うん、聞いてるよ少し。・・・ん、・・・うん・・」
「・・・・・・」
「私は十日間にしようって聞いたけど・・・その日程で十分だろってお店の人も・・、・・・?・・・・!!ん・・ッ」
「・・・・・・」
「ッ・・・・ん?なんでも・・・それで?・・、・・っ・・・あとは?」
名無しはタオルを再び手に取ると、部分的に濡れていた髪の水分を吸わせるため、それを頭部に宛がった。
携帯は肩と耳で器用に挟み、会話も普通に続ける。
少しきょろきょろと頭を動かしたのは、きっと下着を探していたのだろう。
ソファの端に置いていた、自分の服の中に混ざっているものだとばかり考えていた名無しの記憶違いは、後ろから見ていたナッシュには想像に容易かった。
ナッシュは、ベッドは枕元にあった彼女の下着を上下とも手にすると、黙って起き上がり、その寝台からあまり音を立てないようにして名無しに近付いた。
この場合は無論、背後からだ。
そして電話をしながら、名無しが今度はソファから視線をベッドに移そうと、振り返ろうとした瞬間をあえて狙った。