• テキストサイズ

rain of jealous【黒バス/ナッシュ】

第1章 rain of jealous



「・・・言えるわけない・・今のままで・・―――私は・・・っ」


コロンや石鹸など二の次だ。

自覚もある・・・・指摘されてどきりとしたのは、ひとつしか思い当たる節がないから。




自身に纏わりつくのは、他でもないナッシュの匂いだった。

シャワーで全部洗い流したかった・・・毎回そう思っていた筈だった。

けれど、もう流せなくなっていたことも、流したくなかったことも、事実と本音として既に彼女の中で出来上がってしまっているのだ。


「・・・・・はぁ」


またひとつ大きく、そして深くため息をつく。


そのとき、折角手のひらに落としていたソープは泡立てられることもなく、シャワーの打ち付けによって排水溝へと綺麗に流された。


「・・・ナッシュ・・」




抱かれた事実を消したかった。
だから何度も何度も、死ぬほど身体を洗っていた。
ナッシュの部屋のバスルームでも、そして自宅の其処でも。

それは遠い過去ではないのに、シャワーを浴びる度に感じるのだ。

ずっとずっと、恨むように、祈るように思ってきたこと。
自分よりも都合のいい女が早く現れて、用済みになりたいと願うばかりだった。


「・・・・・・」


それが今はまるで、真逆のことしか考えられなくなっていたのだ・・・・心境の変化とは、なんて残酷なのだろう。

名無しは自分の気持ちを偽れずに、困惑を極め続けていた。




「・・・ナッシュ・・――」


温かくも、清涼感の漂うシャワーの心地よい音を傍に。

その後、ため息を深呼吸にむりやり昇華させ、気持ちを落ち着かせて彼女がナッシュの待つ寝室へと戻ったのは、二十分ほど経ってからのことだった。


それまで名無しは暫くバスルームから出れずに、想いを募らせて一人、その場は壁際に背をついて、ただ静かにしゃがみ込んでいた――。

/ 18ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp