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名探偵である彼等二人と歩むあの世界とは…

第1章 ※原作より過去に戻る


よろしい。では、アラフィフ代表として……頑張るとしよう。そうアーチャー特有の単独行動で霊体化した彼は、誰の目にも映る事なく軽々とマンションの一室へ飛び出した。

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「爆発…しない?」

止まったのか?いや…だが一度止まった時間が動き出したと言うのに。そう萩原は呆然とした、いつの間にか背後を取られており振り返れば全く音もなく現れた50代くらいの紳士だ、そして一度止まった爆弾を眺めて「なるほど…これはマスターも用心深くなるか」そう小さく呟くと爆弾を見下ろして屈む。いきなりの事で身体が硬直するも、一般人が触れて良いものではない為直ぐに止めようと手を出せばゾッと背筋が凍った。なんだ、この男は…静かな殺気が刺すように当たる、まるでこの男に触れた瞬間、持っている杖で刺されるような感覚だった。まさに裏の人間なのだろうと悟る。

「ふむ…安心するのはまだ早いな。この爆弾はまた動くよ」
「はっ…?」

先程の刺すような殺気はなく、とても穏やかであり冷静な柔らかい声に情けない声を出してしまった荻原の声と同時にカチカチとまた爆弾が動き出す。時間がない、これは他の者を助ける事が先決だと一般人であろう男になるべく遠くへ逃げろと伝えた。しかし全く動こうとしない紳士は荻原の方を見ると「君を助けろとのマスターの命令を背く訳にはいかんよ…それに私はこう言った事は案外得意でね?」なんて茶目っ気に答えると数秒しかない爆弾をペンチでパチン、パチンと全く迷いなどなく切って行く。最後の一本のコードをパチンと切り終えたが電源も全て落ちており、爆発する事はなかった。

「宜しい、完璧な勝利だ」
「……アンタは、一体」
「……私は数学を心から愛しているアラフィフ紳士なだけさ。さて…心配性のマスターが私を待っているだろうから失礼させて貰うよ」

まだ聞きたい事があったと言うのに消えるようにいなくなってしまった男にお礼を言うのを忘れてしまった事と、自分自身がまだ生きている…と言う事を実感し酷く安堵してボロボロと涙が込み上げたのだった。

+++

「立子…」
「ジェームズさん…怪我は?大丈夫でしたか?」

霊体化したジェームズが帰って来て、彼にそっと触れて大丈夫なのか尋ねた。すると穏やかに頭をぽんぽんと撫でられて「君はやはり優しい娘だな」と笑っている。胸の奥が暖かくなり、貴方には叶いませんと感謝した。
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