第5章 No.4 ちょっとだけ。
白い空間。
黒い天井。
灰色の床。
・・・久々に来た。
前に来たのは・・・雄英に入る前だから、半年前くらいかな。
零无「・・・久しぶりだね、ゼウス」
光と闇が入り交じった、私の精神世界。
白と黒と灰が延々と続く景色の中で、私がその名前を喚べばそれは現れた。
・・・本当、見れば見るほど二度見したくなる。
ゼウス「やあ、我が主よ。
こうして対話するのは半年振りか」
零无「ん、そだね。
・・・それにしても、やっぱ慣れないなあ。ゼウスの恰好」
ゼウス「そうか?
我は気に入っておるぞ、我が主と色は違えど容姿は瓜二つなのだからな」
・・・そう。
ゼウスの姿は、私と瓜二つ。しかも声まで同じ。
ただ、色が違うだけ。
私の髪の色は灰色だけど、ゼウスの髪の色は純白。
私の目の色は鼠色だけど、ゼウスの目の色は透き通った水色。
髪型や身長、体重から果てはスリーサイズまで寸分違わずに同じ。声も同じ。
違うのは、見た目の色と中身。
・・・このゼウスが私の“個性”のひとつ、“魔法”の源。
私の命の恩人でもあり、私が唯一のゼウスの友人。
零无「・・・それで?
なんで私を呼んだの?
また前みたいにタナトス達を抑えられなくなったとか?」
ゼウス「いいや、タナトスとクロノスらは今の所我が主の心配する様な事態にはなっておらぬ。
此度我が主を呼んだのは・・・死柄木弔と言う男についてだ」
零无「!」
死柄木弔。
・・・USJを襲撃して来た“敵”の1人。
私の情報を学校からパクって、尚且つ私を“鍵”とか言ってたっけ。
ゼウス「我が主も知っての通り、我は至善至高・・・そして全知全能の神だ」
零无「うん」
ゼウス「だが、それもこの現世では“個性”と言う特異体質のひとつとなって我が主と共にある。
・・・我の言いたい事は解るか?」
零无「神々の世界では完全無欠最強無敵なゼウスだけど、私が居るこっちの世界ではひとつの能力って事。だからその宿り主の私が五感で知り得た情報しか把握出来ない・・・でしょ?」
ゼウス「うむ、その通りだ。
つまり我が主が見聞き触れた物事しか把握出来ぬ。・・・歯痒いがな」
・・・と、言う事は?