第5章 No.4 ちょっとだけ。
side:相澤
零无が呼ばれてこれから寝る、って事は・・・あいつらん所に行くって事だよな。
俺も前に一度だけ行って会った事があったが・・・もう二度と行きたくないね。
マイク「なんだァ?
神和、わざわざ寝に来たのかよ。それなら婆さんの所で寝た方が寝れるだろ、俺うるせえし」
相澤「いや、正確には意識を失う。
一旦意識を飛ばしたら並大抵の音じゃ起きねえ」
マイク「ア?
意識を失う?なんで?」
相澤「・・・合理的に言えば、零无が精神世界とやらで自分の“個性”と対話する為・・・だな」
マイク「はぁ?
なんだソリャ」
相澤「とにかく、詳しくは体育祭(コレ)終わった後の職員会議で話す。
・・・セメントスがそろそろ終わりそうだぞ」
マイク「お、マジか。
よっし、それじゃテンション上げてくぜ〜!」
スイッチが入ったように、マイクが放送の電源を入れて『ヘイガイズアァユゥレディ!?』と文字通りテンションを高くしていく。
・・・俺はもう慣れたが、普通の奴らならこんな煩い個室で寝るなんて無理だろうな。
チラっと簡易ソファーに横になって眠る、体操服姿の零无に目を向ける。
相澤「(・・・糸が切れたみたいに寝てやがる)」
いつもへらへらしてる掴みどころのない表情の零无が、15歳って言う年相応の顔つきになるのが寝てる時だけだ。
零无がガキの頃から知ってる俺でさえも、起きてる時に零无が喜怒哀楽を見せた事は一度も無い。
・・・それが零无自身の持つ“個性”のせいだって思うと、皮肉な話だ。
相澤「(いくらチート“個性”を持ってるっつっても・・・零无は人間で、まだ15歳の女だろ。
・・・雄英で、少しでも希望を見出してくれりゃいいんだがな・・・)」
明確に目指しているヒーロー像を持たずに雄英に入ったヒーロー科の生徒なんて、零无しか居ないだろうな。
・・・俺じゃ、だめだ。
ヒーローになった俺じゃ意味がねえ。
ヒーローになろうとしてる奴ら・・・緑谷や爆豪、それに轟達じゃなきゃ意味がねえんだ。
必死に、死ぬ気でヒーローになろうとしてる奴らとなら。
零无も、きっと自分の“個性”を好きになる。
だから・・・頼むぜ。
1-A。