第1章 No.0 やり過ぎ要注意。
私に声をかけられて、唖然としていた受験生達が我に返って「さ、サンキュ!」とか「ありがとな!」と言ってきた。
そして去って行く。
・・・てか、なんか今遠くで凄い轟音が聞こえたような・・・。
「あ、あの・・・」
零无「ん?」
「助けてくれてありがとう・・・。
マジ助かった」
零无「・・・別にいいよ。
怪我しそうなヒトを無視して逃げる趣味は無いし。貴女も大怪我負ってないみたいで結果オーライだよ」
斜めに切り揃えた黒髪の女子は「そっか、でも本当にありがとう」と言ってきた。
耳郎「ウチは耳郎(じろう)響香(きょうか)。
そっちは?」
零无「・・・かn『終了~~!!!!』」
ハイテンションな声が、会場全体に響き渡った。
セリフ遮られた・・・。
・・・10分って、早いなあ。
耳郎「げ、もう終わり・・・?
はぁ~、なんか最後のアレで余計疲れた・・・」
零无「怪我、してるなら診てもらえば?」
耳郎「え?
あー、そだね」
雄英高校の看護教諭は、確かリカバリーガールだったはず。
あの人の“個性”は“治癒力の超活性化”だから怪我を治す代わりに疲労感がくる。
零无「・・・それじゃ、私はこれで」
耳郎「あ、うん。
って、名前は?」
零无「・・・零无。神和、零无」
耳郎「零无ね。
受かってて、クラス同じだったらよろしく!」
耳郎さんと別れて、私はそのまま帰路についた。
元々着替えてないし。
怪我してないしちょっと砂埃(すなぼこり)被っちゃっただけだし。
[零无の部屋]
帰る途中で本屋に寄って、お目当てのパズ懸の最新号を買った。
早速問題を・・・と思ってたら、スマホが鳴った。
・・・あ。
まだトリセツ読んでないんだけどな。
零无「・・・通話だから、こっちだよね」
ピッ
『あー、もしもし。零无か?』
零无「うん、零无だよ」
『部屋には着いたか?』
零无「ん。
今パズ懸解きながらスマホのトリセツ見ようとしてたところ」
『そうか』
聞き慣れた声を聞きながら、トリセツに目を通し始めた。