第13章 チョコレート少女
「詞織さんに謝って下さい!」
「なぜわしが謝罪など……」
そのとき、乗務員が「あの」と声をかけてきた。
「お届け物を預かっていたのですが……」
元議員に小さな小箱を手渡し、乗務員は去って行く。
「誰からだ? あぁ、アイツか」
「待ってください。一度俺たちが確認を……」
「大丈夫だ。コイツのことは昔からよく知って……」
――カチッ
元議員が箱の蓋を開けると、そんな乾いた音がした。
何かのスイッチが入ったようだ。
「そのまま動かさないで下さい!」
ピタッと元議員が動きを止める。
「い、いったい何なんだ⁉」
「爆弾です。それ以上動かせば爆発します」
錦戸さんの冷静な警告。そこには先ほどの陽気な雰囲気は一切ない。
元議員が「何とかしろ!」と騒ぐと、ゆっくりと立ち上がった詞織さんが紅い瞳を元議員と爆弾に向けた。
「自業自得ね。あんた、命を狙われている自覚が足りないんじゃない? 人の警告くらい聞いておきなさいよ」
厳しく言い放つ詞織さんに、誰も何も言わなかった。
本来なら僕も「ちょっと言い過ぎじゃ……」と言いたくなるところだが、今回は元議員が全面的に悪い。
元議員は態度を改めることなく、「何でもいいから、早くどうにかしろ!」と喚くが、僕らはそれを無視して話し合う。
「解体はできないんですか?」
「爆弾解体の知識はある程度持っているが、道具を持っていない。ここでは無理だ」
「じゃあ、窓から投げ捨てるとか……」
「新幹線の窓は開かないからねぇ。仮に窓を壊して投げたとしても、その瞬間に爆発するから、確実に新幹線がダメージ食らっちゃうなぁ」
僕の提案を吾妻さんと錦戸さんが棄却する。
他に方法は、と考える僕の横を詞織さんが通り、僕らを振り返った。
「ねぇ。この爆弾ってどれくらいの威力なの? 範囲は?」
「よく見たわけではないが、半径三メートル程度だろう」
「威力はそんなにないね。起爆させた人間を殺すくらいかな? 巻き込まれれば当然ケガをするけど、死ぬほどではないよ」
「それって充分な威力ですよね!?」
二人の話を聞いていた元議員が顔を青くさせる。
逆にその話を聞いた詞織さんは、座席に座る元議員を呆れたような瞳で見下ろした。