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血染櫻【文豪ストレイドッグス】

第13章 チョコレート少女


「その異能って、どういうモンなの?」

「どうと言われましても……」

 説明のしようがない。
 僕はまだ制御ができていないし。
 最後に使ったのは、ポートマフィアに襲われたときだったか。
 それも、窮地に陥って無意識に発動したから、何の参考にもならないけど。
 説明できるとしたら詞織さんの方だろう。
 ちらりと詞織さんを窺うと、ガリガリと咀嚼していたチョコレートを飲み込み、口を開いた。

「理屈で説明できる異能力者なんていない。異能力は異能力。ただ、『そういうモノ』。原理なんてもっと説明できない」

「へぇ、そういうモンなんだ」

「そーゆーモンなの」

 言いながら、詞織さんはチョコレートを二人に差し出す。

「食べる?」

「ありがとう」

「頂こう」

 二人が詞織さんの手から、一つずつチョコレートを取った。
 太宰さん以外に興味ないのかと思っていたけど、なぜか人にチョコレートを分ける。
 すごく不思議だ。
 そう思っていると、詞織さんは僕にもチョコレートをくれた。

「あ、ありがとうございます」

「別に。いっぱい持ってるし」

 相変わらずそっけない受け答え。

「チョコが好きなの? カワイイね」

「チョコレートが好きだと、何で可愛いんだ?」

「分かってないな、吾妻。そういう甘い物好きなところが、女の子っぽくてカワイイって言ってるんだよ」

「俺も甘い物が好きだ。俺も女っぽいのか?」

「お前はどう頑張ってもカワイくならねぇよ」

 げんなりする錦戸さん。
 天然なのだろうか。
 でも、甘い物好きなところはギャップがあって、親近感が湧く。

「ふんっ、楽しそうに喋りおって。何がチョコレートだ、何が可愛いだ」

 楽しい空気をぶち壊すように、通路を挟んで反対側に座っていた元議員が、忌々しそうに言った。

「異能力? ただの化け物だろう。気持ちの悪い紅い目をしおって」

「そんな言い方はないでしょう⁉」

 抗議しようと僕は立ち上がった。
 思い出したのは、詞織さんと初めて会ったときに聞いた言葉。


 ――「あたしはこんな見た目だから『化け物』って言われてた」


 その言葉は、詞織さんを傷つけてきたものだ。
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