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血染櫻【文豪ストレイドッグス】

第13章 チョコレート少女


「あ、はい。今日はよろしくお願いします。僕は中島敦で……」

 僕は慌てて自己紹介し、詞織さんを見たけど、彼女が名乗る気配はない。

「えっと、彼女が櫻城詞織さんです」

 僕は何度も頭を下げた。
 こういった状況の礼儀作法を知らない僕は、とにかく「今日は頑張ります!」と言う。
 すると、元議員は鼻を鳴らし、不機嫌そうに舌打ちした。

「武装探偵社め。よくもこんな餓鬼どもを寄越しおって。おい、探偵社!」

「はい!」

 話を振られた僕の背筋が伸びる。

「すぐに社に戻って、代わりの人間を呼んでこい!」

「い、いや……今日はみんな、別の案件で忙しく……」

「わしの言うことが聞けんのか。わしを誰だと思って……」

「ただの人間でしょ」

 唐突に詞織さんが口を開いた。
 小さく欠伸をすると、彼女は紅い瞳を元議員に向ける。

「どんな肩書きを持っていようと、ただの人間じゃない。それを偉そうに」

「き、貴様! 誰に向かって……」

「うるさい」

 不機嫌丸出しの詞織さんは、凍えそうなほどに冷たい声音で続けた。

「苦情なら、あたしたちがあんたを守れなかったときにして。少なくとも……」

 詞織さんの紅い視線が、元議員の後ろに控える二人のSPに移る。

「あんたの後ろにいる二人よりは、あたしたちの方が戦える」

 ちょっとちょっと!
 そんなことを言ったら……。

「へぇ、言うじゃないか、お嬢ちゃん」

 そう言ったのは、元議員の右側のSPだった。
 甘い顔立ちの、爽やかな男性だ。
 谷崎さんに似た、ややタレ目な瞳に好戦的な色を宿している。

「…………」

 元議員の左側の男性は黙ったまま。
 短髪で、右側の人と比べると大柄。
 鋭い瞳が真っ直ぐに詞織さんを射抜く。

「ふんっ。そこまで言うなら、この二人を倒してみろ。この二人は警視庁警備部でもトップクラスの実力を持っている」
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