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血染櫻【文豪ストレイドッグス】

第12章 名探偵はお見通し


「そこまで言うなら見せてもらおうか、その能力とやらを!」

「おや、それは依頼かな?」

「失敗して大恥をかく依頼だ!」

 箕浦刑事から乱歩さんへの依頼が成立した。
 それを聞いた乱歩さんは、楽しそうに口角を上げる。

「あっはっは。最初から素直にそう頼めばいいのに」

「ふん。何の手がかりもない、この難事件を相手に大した自信じゃないか。六十秒、計ってやろうか?」

 その言葉に、乱歩さんはますます笑みを深めて言い切った。

「そんなにいらない」

 そんな中、太宰さんは敦に耳打ちする。

「敦君、よく見てい給え。探偵社を支える能力だ」

 乱歩さんの異能『事件の真相が分かる』能力。
 そのトリガーとなる黒縁の眼鏡を、乱歩さんは懐から取り出して掛けた。


 異能力――『超推理』


 その時間はわずか三秒にも満たなかった。
 しばらく無言で佇んでいた乱歩さんは、眼鏡をかけ直しつつ「なるほど」と頷く。

「犯人が分かったのか?」

「もちろん」

 ブイサインをする乱歩さんに、箕浦刑事は愉快そうに笑った。

「くくっ。どんなこじつけが出るやら……犯人は誰だ?」

 すると乱歩さんは、立てていた中指を収めて、人差し指をある人物に向ける。
 その指の動きに合わせて、あたしたちの視線が一人に集まった。
 そして、乱歩さんは静かな声で断言する。

「……犯人は君だ」

 指を差されたのは――杉本巡査だった。

「は……?」

 たまらず、といった様子で箕浦刑事が笑い出す。

「くっ……くっははは! おいおい、貴様の力とは笑いを取る能力か? 杉本巡査は警官で俺の部下だぞ!」

 けれど、それだけ笑われたにも関わらず、乱歩さんは微塵も揺らがない。

「杉本巡査が、彼女を殺した」

 意見を変えない乱歩さんに焦れて、箕浦刑事は「馬鹿を言え!」と反論する。

「だいたい、こんなに近くに都合良く犯人がいるなど……」

「犯人だからこそ捜査現場にいたがる」

 箕浦刑事に最後まで言わせず、乱歩さんは続けた。

「それに言わなかったっけ? 『どこに証拠があるかも分かる』って。拳銃貸して」

 乱歩さんは杉本巡査に手を出し、『ペン貸して』とでも言うような軽い調子で言う。
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