第12章 名探偵はお見通し
「山際先輩は、政治家の汚職疑惑、それにマフィアの活動を追っていました」
マフィアと聞いて、それに関わったばかりの敦が反応を示す。
あたしは太宰さんを覗き見たけど、外から見ただけでは何を考えているのか分からなかった。
「そういえば! マフィアの報復の手口に似た殺し方があったはずです! もしかすると先輩は、捜査で対立したマフィアに殺され……」
「違うと思うけど」
杉本巡査の話を聞き終わるより早くあたしは自分の考えを述べる。
「マフィアの報復の手口って身分証と同じだもん。細かい部分が身分を証明するの。その女の人、顔が綺麗でしょ? だからマフィアに殺されたんじゃないよ」
そう言うと、太宰さんがあたしの頭を撫でて「その通り」と褒めてくれた。
「マフィアの手口はこうだ。まず裏切り者に敷石を噛ませて、後頭部を蹴りつけ顎を破壊。激痛に悶える犠牲者をひっくり返し、胸に三発」
太宰さんの話に敦が「うえっ」と青い顔をする。
「た、確かに正確にはそうですが……」
「この手口はマフィアに似てるが、マフィアじゃない。つまり……」
犯人の偽装工作。
「そんな……偽装のためだけに、遺骸にニ発も撃つなんて……ひどい」
杉本巡査が痛ましそうに顔を伏せる。
そこで、あたしは唐突に、今までの話と遺体の状態に引っ掛かりを覚えた。
「あれ?」
「どうしたんですか、詞織さん?」
敦が聞いてきたが、あたしはその引っかかりが何なのか分からず、「何でもない」と答えるしかない。
そこへ乱歩さんがしんみりした空気を切り裂くように声を上げた。
「ぶ~っ‼」
杉本巡査がビクッと飛び上がる。
「はい、時間切れ~! 駄目だねぇ、君。名探偵の才能ないよ‼」
笑いながら杉本巡査の頭をダムダムと叩く乱歩さん。
この自己中心的(マイペース)ぶり、首領のエリスさまを思い出す。
思えば、よく振り回されたなぁ。
そんな感傷に浸っていると、苛立ったように箕浦刑事が乱歩さんに詰め寄った。