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血染櫻【文豪ストレイドッグス】

第11章 元マフィアの二人


「じゃあ、国木田君は?」

「止せ! 俺の前職などどうでも……」

 話が国木田に振られる。
 国木田の制止の声も聞かず、敦は考え始めた。

「うーん、お役人さん?」

「惜しい。彼は元学校教諭だよ。数学の先生」

「へえぇ!」

 役人でもいいと思うけどね。役所にいそうだし。

「昔の話だ。思い出したくもない」

 驚く敦に、国木田は苦々しい顔で眼鏡を上げて言った。
 数学教師……あたしも太宰さんに算数とか数学とか習ったけど、相手が国木田だったら、きっとキレてたなぁ。
 そして、最後だ。

「じゃ、私は?」

 太宰さんが自分を指さす。

「太宰さんは……」

「ちなみに、太宰さんの前職はあたしと同じよ」

 あたしは立ち上がってそう補足する。
 そして、ニコッと笑う太宰さんの首に後ろから抱きついた。
 太宰さんはあたしを振り払うことをせずに、ニコニコと敦の答えを待つ。
 敦の顔がどんどん険しくなっていった。
 何も思いつかないのだろう。
 普通、「マフィア」って答えは出てこないよね。

「ムダだ、小僧。武装探偵社七不思議の1つなのだ、こいつらの前職は」

 へぇ、いつの間に七不思議になってたんだろう。

「最初に当てた人に賞金があるンでしたっけ?」

 そうそう。太宰さんの気まぐれで始まったんだよね。
 まぁ、当てられたらそれだけ凄いってことだけど。

「そうなんだよね。誰も当てられなくて、懸賞金が膨れ上がってる」

 くるくるとコーヒーをマドラーでかき混ぜ、「飲む?」とあたしに聞いてきた。
 フルフルと首を振る。
 あたしがコーヒー飲めないの知ってるくせに。

「俺は溢(あぶ)れ者(もの)の類だと思うが、こいつは違うと言う。しかし、こんな奴がまともな勤め人だったはずがない」

「違うよ、ちゃんと働いてたもん」

 すごかったんだから、もう伝説級だったんだから!

 ……と、言えないのが悔しい。

 コーヒーにつけていたマドラーを太宰さんが差し出してくるから、あたしは仕方なくパクリと口に含んだ。

 ……苦い。

 それが顔に出ていたのか、太宰さんが笑いながらチョコをあたしの口に入れてくれる。
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