• テキストサイズ

血染櫻【文豪ストレイドッグス】

第10章 ヤキモチ少女


「小僧」

 国木田が大きくため息を吐きながら敦を呼んだ。

「恨むなら太宰を恨め。もしくは仕事斡旋人(あっせんにん)の選定を間違えた己を恨め」

「ちょっと、国木田! それどういう意味よ! 仕事を斡旋してあげてるんだから、太宰さんが恨まれる筋合いないじゃない‼」

 聞き捨てならないとあたしが国木田に物申す。
 それを笑いながら見ていた太宰さんが、敦に指を立てて見せた。

「そういうことだよ、敦君。つまりこれは、一種の入社試験だね」

 そう。
 これは敦のための入社試験。
 探偵社の社員になるために、全員が通る道だ。
 当然、あたしと太宰さんも受けた。
 どこからが入社試験だったのか。
 最初から最後まで全てだ。

 前日の夜に配役を決め、あたしたちは定められた役通りに演じる。
 クジで番号が小さい人間をハズレとし、1番小さな番号を引いた人間が爆弾魔役をすることになっていた。
 ちなみに、2番目に小さな番号を引いた太宰さんと、その次に小さかった国木田も配役に組み込まれた。
 本日の主役を探偵社に連れてくる役だ。
 あたしはアタリで配役なしだけど、太宰さんの行くところはあたしの行くところだからね。

 あぁ、太宰さんがドラム缶に嵌まっていたのは、何の関係もないよ。

「入社……試験?」

「その通りだ」

 少しずつ事態を呑み込み始めた敦の言葉を肯定する声。
 低く、お腹の奥底まで響くその声に空気が引き締まる。
 銀髪に和装の、40代程の男性が社内に足を踏み入れた。

「社長」

「しゃ、社長⁉」

 頭を下げて発した国木田の言葉に敦が驚愕する。


 武装探偵社社長、福沢諭吉――能力名『人上人不造(ヒトノウエニヒトヲツクラズ)』。


「そこの太宰めが、『有能な若者がいる』というゆえ、その魂の真贋、試させてもらった」

 太宰さんが敦を社員に推薦したけど、彼は区の災害指定猛獣。
 保護すべきかどうかで意見が分かれ、社長の一声で、入社試験を行うことになったのだ。
/ 320ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp