第10章 ヤキモチ少女
「怨恨だ。犯人は探偵社に恨みがあって、社長に会わせないと爆発するぞ、と言っている」
「ウチは色んなところから恨みを買うからねぇ」
「仕方ないよ、探偵なんだもん。探られて困ることがある、アイツらが悪い。あぁいうの、逆恨みっていうのよ」
あたしは人質の少女の横に置かれている四角い箱に目を止める。
「太宰さん、あれ……」
「うん、高性能爆薬だ。この部屋くらいは吹き飛んじゃうね。爆弾に何かを被せて爆風を抑えるって手もあるけど、この状況じゃなぁ」
お手上げ、と太宰さんは片手を上げた。
「そんなに会いたがってるなら、会わせてあげればいいんじゃない? 社長に」
「殺そうとするに決まってるだろ! それに、社長は出張中だ‼」
あたしの提案を、国木田は怒鳴りながら却下する。
そんなに怒んなくても、社長だったら爆弾魔の1人や2人や100人なんて、片手でちょちょっとやっつけられるに決まってるじゃない。
それに、怒鳴ると痔に罹るよ? って、これ嘘だったんだ。
太宰さんは次の手を考えているのか、顎に手を当てて思案している。
「……人質をどうにかしないと」
そうだよね。人質さえいなければ、後はどうにでもなるし。
敦を除くあたしたちは目配せし、バッと構えた。
――じゃんけん、ポンッ
グーチョキパーのあいこ。
――ポンッ
また、あいこ。
――ポンッ
やった!
国木田はグーで、あたしと太宰さんはパー。
太宰さんが笑顔で爆弾魔への道を手のひらで示す。
わなわなと震える国木田だったが、彼には「行かない」という選択肢が存在しない。
だって、負けたのだから。
舌打ちしながら、国木田は「おい」と低い声で爆弾魔の少年に声をかけた。
「落ち着け、少年」
だが、爆弾魔はリモコンを国木田に向けて叫ぶ。
「来るなァ! 吹き飛ばすよ‼」
国木田はサッと手を上げて、何も持っていないことをアピールした。
けれど、爆弾魔は国木田を睨みつけて続ける。
「知ってるぞ。アンタは国木田だ! アンタもあの嫌味な『異能力』とやらを使うンだろ⁉ 妙な素振りをしたら、みんな道連れだ‼」
そのやりとりを見ていた太宰さんが、「まずいね、これは」と零した。