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血染櫻【文豪ストレイドッグス】

第8章 理想を愛する男


 あたしたちは子どもの親を探すという、大きな遠回りをして、ようやく駄菓子屋を訪れた。
 親探しは思いの外手間取り、事務所を出てから2時間以上も経過している。
 だが、その間も、太宰さんは見つからなかった。

「う~……太宰さん、太宰さん」

「そんなに言うなら、異能で探せばいいだろう?」

「範囲が広すぎて探せない」

 あたしの『血染櫻』は、自分の血液に視覚や聴覚を移行することで、遠くの景色を見たり、遠くの会話や音を聞いたりできる。もちろん、提案者は太宰さんだ。ポートマフィアにいた頃は、何かと重宝した。
 探偵社でも、結構使用頻度は高い。
 難点は、捜索範囲が限定されていなかったり、広すぎたりすると、血液の使用量が多くなりすぎて探索しきれないことだろうか。

「……う~ん……あ、そうだ」

「なんだ……って、おい!」

 良い案が閃いたあたしは、右大腿に隠しているナイフを取り出し、自分の肩甲骨に刃を立てた。
 異能の特性上、痛みに対して強い耐性があるから、いちいち呻き声は出さない。
 あたしの背中からは血液が伸び、それは紅い翼を形作る。

「国木田、あたし、上から探してみる!」

 国木田の制止の言葉を無視して、あたしは翼をはためかせ、空へ飛び立った。
 手を日よけにして、あたしは目を凝らす。
 そして、あたしは太宰さんを見つけた。
 すぐに向おうとして、国木田の存在を思い出す。
 しばらく悩み、あたしは一度国木田のところへ戻った。

「国木田、太宰さんいたよ!」

「お前、その前に手当を!」

「そんなのいいよ! 早く行こ!」

 あたしのワンピースの背中には赤い血の染みができていたけど、長い髪でちょうど隠れるし、目立たないはずだ。
 あたしは心配する国木田を引っ張って、太宰さんのところへ向かった。

* * *

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