第40章 『はじまり』のおわり

「ほれ、一言 言いたかったんだろ？」

　ポソリと呟いた与謝野の言葉は、国木田にしか届かない。
　しかし、それで良かったのだ。

　国木田はグッと唇を噛みしめ、意を決したように叫んだ。


「二人とも、よくやったな！」


　照れくさくて言えなかったことをようやく口にした国木田は、とうとう与謝野に連れ攫われたのだった。

「恥ずべき行いを後に残すな……か」

　国木田の説教に紛れた言葉に、敦は鏡花を呼ぶ。

　思い出したのは、Ｑの異能を受けて、ナオミと春野を傷つけたことだ。

「鏡花ちゃん、頼みがあるんだけど……」

　彼の頼みに、鏡花は楽しそうに談笑するナオミと春野の服を引っ張り、敦が呼んでいることを告げる。
　ナオミと春野を前にした敦は、すぐに頭を下げた。

「すみませんでした……！　Ｑの異能を受けて、お二人には酷いことを……自分の力の危うさを分かっていれば、あんなことには……！」

　二人は怪訝な表情で互いの顔を見合わせ、やがて合点がいったように目を丸くした。

「あぁ！　あのときの！」

「忘れてたんですか⁉」

　驚く敦に、二人は微笑む。

「あのときはショックでしたけど……」

「ここではあの程度、いちいち引きずっていられませんわ」

　その反応に、敦はホッと息を吐き、へなへなと座り込んだ。

「気をつけます……本当にどうかしてました。お二人を異能で殴るなんて」

　そこへ、後ろから現れた谷崎が、敦の肩に触れた。

「敦くゥん？　今の話、初耳なンだけど？」

　暗い笑みを浮かべる妹思いな谷崎に、敦はダラダラと流れる汗を止めることができなかった。