第40章 『はじまり』のおわり
異能力戦争終結の慰労会を兼ねた、泉鏡花の歓迎会。
鏡花へのサプライズは成功し、クラッカーで出迎えられた彼女は珍しく目を丸くした。
それから、「乾杯!」と酒やらスウィーツやらジュースやら野菜やらを手にして掲げる。
その日の探偵社は、実に賑やかだった。
谷崎は料理を運ぶのにバタつき、ナオミはケーキに目を輝かせ、春野はパソコンに保存された三毛猫「ミィちゃん」の画像にうっとりし、福沢はこっそりそれを盗み見る。
敦は乱歩と賢治に捕まり、鏡花は湯豆腐に舌鼓を打ち、国木田は電卓を弾きながらパーティーに掛かっている費用に胃を痛める。
やがて、鏡花と話していた敦に、国木田が声を掛けた。
「敦。その……怪我はどうだ?」
「えぇ、お陰様で」
組合の長との戦闘で負った傷は、虎の異能のおかげか、それほど酷くはない。
そのことにホッとしながらも、国木田はどこかそわそわと落ち着きがなかった。
「なんだ……今回、お前たちの作戦行動で、街は壊滅を免れた。社の先輩として一言、言うべきだろうと思ってな」
ガシッと、国木田は敦と鏡花の肩を掴む。
「報告書は明日までだぞ」
あ、明日⁉
無理だ。今日、これだけバカ騒ぎをすれば、当然翌日に響くだろう。
とてもではないが、報告書を仕上げるだけの余力など残らない。
だらだらと汗を流す敦に、国木田は続ける。
「そもそも、探偵社という集団組織において、単独作戦は例外なのだ! 今回の成功を以降に活かすなとは言わんが、社の基本動作は疎かにするな! 鏡花も同じだ! 探偵社員として自覚を持ち、決して恥ずべき行いを後に残さぬよう――」
そこへ、くどくど言う国木田の首に与謝野が腕を回した。
「全くだねぇ、国木田。ところで、どいつも酒づき合いが悪くて困ってンだ。ちょっとつき合いなよ」
「えッ、いや、俺もそれほどには――」
酒瓶を片手に、与謝野が国木田を引きずる。