第39章 光を夢見る少女
誰もいない無機質な無人機の一室。
太宰と詞織からの通信が断たれ、鏡花は静寂の中でただ膝を抱えていた。
二人の言っていたことが理解できないわけではない。
それでも、受け入れることはできなかった。
薄暗いその部屋では、太宰が再びスイッチを入れていった操作盤が光っていた。
最後に決めるのは、君自身だ。そう言い残して。
やがて、操作盤からノイズ混じりの音と共に、音声が聞こえてくる。
『ザー、ザザザ――……たい……れば……ど……なって……』
音声は次第に鮮明になり、言葉を紡ぎ出した。
『ザザ……めだ。こっちの操作も受けつけない! このままじゃ落ちるぞ!』
聞き覚えのある声に、彼女はゆっくりとした動作で顔を上げる。
それは、鏡花を光の世界へと導いた少年のものだった。
* * *
――白鯨の操舵室。
操舵室のコントロールにすら、白鯨は反応しなかった。
「もう時間がない! 何か手を考えないと、みんなが!」
「無駄じゃ」
そう言いながら入ってきたのは、白鯨に一人残ったメルヴィルだった。
「外部から何者かが侵入し、機関部制御を奪っておる」
「そんな! いったい誰が……!」
ここまで来たのに。
このままでは探偵社が……街の皆が、死んでしまう。
せっかく、信じて任せてくれたのに。
結局、何もできないのか!
『まだ方法はある』
突如、操舵室の無線機に通信が入った。
「この声……鏡花ちゃん⁉」
彼女は今、特務課の無人機にいるはずでは……。
敦の混乱を他所に鏡花は冷静に続ける。
『そちらの状況は聞いた。白鯨の再浮上は無理でも、大質量で無理やり叩き落とせば、街に届く前に墜落させることができる』
自分の乗った無人機を衝突させようと、鏡花は言った。