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血染櫻【文豪ストレイドッグス】

第39章 光を夢見る少女


「……ゼルダ……待っていてくれ……もう一度、君に、幸福を……」

 異能が解けたフィッツジェラルドが、白鯨から落下する。
 芥川の『羅生門』で敦の虎の腕を強化した技が、組合の長を倒したのだ。

 それを無言で見送った敦は、ハッと気づく。

「そうだ……制御端末!」

 駆け出そうとした敦の足を、芥川が外套を伸ばして絡めとった。

「ぐわぁッ」

  派手に転んだ敦が振り返ると、自分と同じくらいにボロボロに傷ついた芥川が蔑んだ目で彼を見ていた。

「愚者め。最後の攻撃の刹那、奴の背広から抜き取った」

 変形した外套の先には、フィッツジェラルドが持っていた制御端末があった。

「は、はは、早く止めないと!」

 芥川の外套から制御端末を取ると、液晶画面は残り三秒を示している。

「あ、あと、ささ、三秒⁉」

 慌てて停止させれば、残り一秒のところでタイマーは停止した。
 それを確認した敦は、身体の力が抜けて、へなへなと座り込む。

 しかし、ホッとしたのも束の間、その顎を芥川が蹴り飛ばした。

「ガッ⁉︎」

「今すぐ四つ裂きにしてやりたいが、あいにく力を使い果たした。今はこれで我慢しておけ」

「お前……次会ったら覚えとけ……」

 恨みを込めて言った次の瞬間、ガクンッと白鯨が沈んだ。
 端末を見れば、そこには「DESCENT」の文字が表示されている。

「下降⁉ そんな馬鹿な! 何もしてないのに!」

「寄越せ!」

 敦の手から端末を取り上げた芥川が、カチカチッと幾つかのボタンを押し、それを無造作に放り投げた。

「操作を受けつけぬ」

 何かが起こっている。それだけは明らかだった。

「操舵室へ向かうか」

 フィッツジェラルドとの戦闘であちらこちらに亀裂が入った廊下を通り、二人は操舵室へ向かった。

*  * *


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