第39章 光を夢見る少女
「何人殺したの……?」
『……三十五人』
分かっていたその答えに、あたしの中に居座るマフィアの自分が嗤った。
三十五人。それも、六ヶ月で。
「六ヶ月で、たった三十五人しか殺せないの?」
可笑しくて嗤ってしまう。
「あたしが最初に殺したのは実の父よ。襲ってきた裏組織の人間から逃げようとする父の心臓を、背中から貫いた。ついでに、喚く母親の首も刎ねてやった。最後に、襲ってきた裏組織の連中……十一人をまとめて殺した。次の日には初任務で三十七人」
マフィアに入ってから辞めるまで。
あたしは鏡花の百倍、千倍も人を殺した。
「でも、あたしは後悔したことなんて一度もない。マフィアだった今までも、探偵になった今も、これからも。だって、悪いことをしたなんて思ったことないもの」
あたしが人を殺したのも、鏡花が人を殺したのも仕事。
それ以上でも、それ以下でもない。
「暗殺の才能が何? 人を殺したら、人を助けちゃいけないの? 人殺しを後悔してないあたしが探偵になれて、人殺しを後悔しているあなたが探偵になれない理由って何? あなたは自分を否定しながら、あたしや太宰さんを……人を助けたいと人殺しを止めた人間を否定しているのよ……!」
握りしめた拳から血が流れる。
爪が手のひらに食い込み、裂けたのだろうか。
傷の痛みを感じない代わりに、胸が苦しかった。
太宰さんがあたしからヘッドホンを取り上げる。