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血染櫻【文豪ストレイドッグス】

第37章 黒社会最悪のコンビ


 ラヴクラフトが、槍のように尖らせた無数の触手を中也に伸ばす。
 それを中也は、腕を横に振ることで引き裂いた。
 けれど、引き裂かれた触手は瞬く間に再生する。

「しかし……あれは一体何だい? 中也がいくら削っても即座に再生する。相棒の君なら、あれの正体を知っているんじゃないかな?」

 中也が攻撃をし、もしくはラヴクラフトが攻撃し、中也の攻撃で損傷した触手が再生され、中也の迎撃に傷ついた触手が再生され、を繰り返している。

 今の中也は、力を使い果たして、死ぬまで暴れ続ける。
 つまり、中也が力を使い果たす前に倒さなければならない。

 太宰さんの問いに、スタインベックは目を伏せた。

「ふん、さてね……仮に知っていても教えるわけないだろ」

 重力子彈を作る中也の口元から、黒い血が伝い始めた。

「まずいな。中也の身体が保たない」

「あいにくだね。あぁなったラヴクラフトを外部から破壊する手段なんて存在しない」

「『外部から』? つまり、内部からの攻撃は効くわけだ」

 スタインベックの台詞に含まれた意味に、太宰さんは勝機を見出したのか。

 ――オォォオォォオォ……

 ラヴクラフトの絡まり合う触手の中には、太宰さんの奪われたギプスが残っている。
 それを見つけた太宰は、口の端を持ち上げ、あたしを呼んだ。

「詞織。ギプスに君の血液を仕込んである」

「えっ、いつの間に……」

「威力を最大限に、今すぐ破裂させるんだ」

「で、でも……あたしの力じゃ……」

 ラヴクラフトを傷つけることはできなかった。
 そんなあたしに、太宰さんは真剣な眼差しを向ける。

「詞織の異能なら、爆弾くらいの威力は余裕だろう? それでいい。あの化け物にとって、内部は唯一の弱点。君の異能でもダメージを与えることができる」

「ほ……ほんと、に……?」

 恐る恐る見上げれば、太宰さんは頷いた。

「私を信じて」

 その言葉だけで、あたしは何だってできる。
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