• テキストサイズ

血染櫻【文豪ストレイドッグス】

第37章 黒社会最悪のコンビ


 手の先から浸食された中也の姿は、見た目の変化こそラヴクラフトほどではないけれど、元の中也の姿とはあまりにも違う。

 そこへ、あたしたちが最初に交戦したときに、中也の蹴りを喰らって気絶していたスタインベックが、ようやく目を覚ます。
 変貌したラヴクラフトと、それと互角に戦う中也の姿に、スタインベックは目を見開いた。

「何だ、あれは……」

 驚いているのはラヴクラフトの姿ではなく、中也の方を見てだ。
 スタインベックの目覚めに気づき、あたしは異能で彼を拘束し、その首筋に紅い刃を這わせた。

「知りたいかい? 組合の働き蟻君。あれが、中也の異能の本当の姿だよ」

「本当の姿?」

 そう、呟いたのはあたしの方だ。
 初めて見る中也の姿に、あたしはそれ以上の言葉を紡げない。

 あたしの『妖櫻』は確かに強力?
 正直、冗談としても笑えない。

 中也の『汚濁』とあたしの『妖櫻』は、比べるのもおこがましいほどに差があった。

 破壊力も、規模も、圧倒的なまでに。
 劣等感など覚えることすら馬鹿馬鹿しい。

 あたしたちの目の前では、中也とラヴクラフトの交戦が続いている。
 中也の異能の影響か、砕けた地面が岩となって宙に浮かんでいた。

 地面を蹴った中也は、弾丸のような速さで駆け、ラヴクラフトを切り裂く。
 続けて、黒い球体のエネルギーを両手で作り出し、それをラヴクラフトめがけて放った。
 大きな轟音が響き渡り、巻き上がった砂煙が二人を覆い隠す。

「中也の『汚濁』形態は、周囲の重力子(じゅうりょくし)を操る。自身の質量密度を増大させ、戦車すら素手で砕くことも可能だ。圧縮した重力子弾は、あらゆる質量を呑み込むブラックホールに等しい。ただし、本人は力を制御できず、力を使い果たして死ぬまで暴れ続けるけどね」

 だから、太宰さんの『異能無効化』とセットで使わないといけないんだ。
/ 320ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp